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「ある優良企業」転写
●優良企業を調べると、そこには必ず優良な経営者がいる。先日訪問した
ある会社は、優良企業のひとつとして地域および業界では有名な会社だ。
名古屋に本社を置き、毎年高額納税を続けるこの会社は、グループ企業
15社をもつ。そのトップに立つY氏(58歳)の経営方針。
1.新会社を設立するにあたっては、資本金と同額の預り金を集めるべし!
2.新会社の創業メンバーには、管理に明るい人材を加えるべし!
3.ものは何処よりも安く買い、人は何処よりも高く買うべし!
4.幹部の登用は、その人格の高さと遵法精神を重んずべし!
5.社員はまず、年収の半分の貯蓄をすべし!
6.日銭商売にあっては、借金は避けるべし!
7.2期連続して赤字の部門・店舗は、潔く失敗を認め、撤収すべし!
8.事業の拡張計画は、人材の成長スピードを最優先に考慮すべし!
9.ブームには乗るなかれ!
10.時には社運をかけた挑戦を行い、社内に緊張をもたらすべし!
●すこし補足。
「1」について
この会社独特の方針だが、理にかなっている。
新会社が最初につまずきやすいのは資金の問題だ。資金がないから人も物
も充実しない。なぜそうなるのか?
それは資金見通しの甘さである。資本金の大半が開業費用で消えた、とい
う例をたくさん見ているが、資本金と同額の預り金を出資者から集めると
いう考え方は堅実だ。身の丈にあった成長計画を作ることが企業の独立性
を保持する条件だ。
●「2」について
新会社にはふつう、社内規定のたぐいが何一つない。就業規則も賃金規定
も何もない。ついつい内部は混乱しやすい。戦国武将でも、強い軍団には
必ず有能な補給官吏がいる。総務経理や財務など内部管理に明るい人材を
創業メンバーに加えることは重要だ。
●「3」について
わかりやすい方針だ。
賃金の問題で経営者を悩ますのは、「払いすぎていないか」「少なすぎな
いか」という問題だ。そこで、何らかの賃金統計と照らし合わせ、世間相
場とのかい離状況を定期的に点検すると良い。労務士事務所などでは社員
の賃金カーブと世間相場カーブとを比較してくれるサービスを行っている
ところもある。
●「4」について
これもこの会社独特のものだ。事業の社会性という問題を考えたとき、こ
の社長は、「立派な社会人を育成することこそ企業最大の使命」と定義し
た。立派な社会人とは、まず遵法精神を重んじ、次いで道徳的にも人の模
範たる人物を育成することにした。この方針は比較的最近つくられたもの
だ。多額の現金を扱う店舗部門では、過去において幹部の不正事件などが
あったと聞く。Y社長は、そうした事件による経済的損失よりも、結婚式
の仲人まで引き受けた期待の店長を失うことの精神的ダメージのほうが大
きかったそうだ。
この会社では、酒気帯び運転でも解雇になる。また社員はそのことに不便
を感じてもいない。
●「5」について
これは、「4」のテーマと連動している。社員が経済的に自立し、家庭人
としても責任を果たしてほしいと願ったものだろう。店長以上の役職者は
毎年、資産と負債の状況を会社に報告させることも検討中とのこと。
日本的経営の古き良き伝統のひとつ、社内貯金制度もいまだに健在で、社
員の蓄財を本気になって支援している。
●「太った豚になるよりは、やせたソクラテスになりたい」という言葉があ
り、それが美徳とされている。しかし、資本主義経済の牽引役たる企業経営
者は「太ったソクラテス」になるべきだ。
肉体が太ることは問題だが、経済的に富めるものになることは、それ自体で
社会的に意義がある。
●成功している会社を素直に認めたがらない経営者もいる。当然学ぼうとも
しない。むしろマスコミといっしょになってつまずいたベンチャー企業を叩
く人もいる。経営者は、貧しいことを恥じる必要もないが、富めることを批
判してもいけない。
●「6」について
今風の表現で言えば、キャッシュフローを把握した上で設備投資を検討する
ことの大切さを強調している。ドラッカー氏が来日した際、ある日本企業を
訪問した。そして試算表を詳細に調べ上げ、所感を語った。それは、「今の
経営を続けるかぎり、この会社が倒産する可能性は向こう百年間ありません」
というものだった。いかなる経済変動があっても倒産しない経営基盤とは、
財務力だ。
●「7」について
投資には「見切千両」という言葉がある。事業には失敗がつきもので、むし
ろ失敗の山の中に成功がある。失敗がもたらす損失のダメージを把握してお
こう。損切りの基準を事前に決めておく点がユニークだ。
●「8」について
この項目については2通りの意味があると思う。一つは、人の成長よりも出
店ペースの方が早ければ、やがて店舗のレベルが落ちてしまう、という意味
がある。
もう一つは、事業の拡張ペースにおいつく経営陣を作っていかないと事業全
体をマネジメントできなくなる、という意味がある。
むしろ後者のもつ意味の方が大きいのではないか。
1.新会社を設立するにあたっては、資本金と同額の預り金を集めるべし!
2.新会社の創業メンバーには、管理に明るい人材を加えるべし!
3.ものは何処よりも安く買い、人は何処よりも高く買うべし!
4.幹部の登用は、その人格の高さと遵法精神を重んずべし!
5.社員はまず、年収の半分の貯蓄をすべし!
6.日銭商売にあっては、借金は避けるべし!
7.2期連続して赤字の部門・店舗は、潔く失敗を認め、撤収すべし!
8.事業の拡張計画は、人材の成長スピードを最優先に考慮すべし!
9.ブームには乗るなかれ!
10.時には社運をかけた挑戦を行い、社内に緊張をもたらすべし!
●「9」について
船井総研の船井幸雄氏は、「経営の要諦は二つ、時流に乗ることと原理原則
に則ることだ」と語っている。私もその意見に賛成だ。
ただし、時流に乗るという言葉のなかにも二種類あるのではないか。一つは
さざ波のように短期間で終わる流行商売、二つ目はうねりのように長く続く
時代の流れだ。
●昭和40年代にボーリングブームがあった。プロが誕生し、毎日のようにテ
レビ放送までされたボーリングも、終わってみれば過剰なレーン数だけを残
して多くの会社が破綻した。長くて数年、短ければ一年弱で去っていくブー
ムがある一方で、長く続く時流もある。
例えば、戦後のインフレと土地神話だ。スーパーのダイエーは、この時流の
恩恵を最大限に活かして急成長した。借金をして不動産を取得し店舗を出す。
しばらくするとインフレのおかげで借金の価値は目減りし、土地の担保価値
は上昇する。この2つの恩恵のほかに、所得倍増計画やモータリゼーション
の波など、あらゆる時流の恩恵をこうむって成長した。
●私は「バブル」という表現を好まない。なぜなら、ダイエーのように時流
に乗って成長した尊敬すべき会社までひっくるめて「バブル」「バブリー」
と切って捨ててしまうからだ。つまずいた会社を批判することは誰にもでき
るが、なぜ批判されるほどの会社になれたかを忘れてはいけない。
「経営とは環境適応業」と言うが、「時流適応業」と解釈しても良い。「バ
ブル」とは、土地転がしに代表されるように、企業としての付加価値が存在
せずに得られる不労所得を指す。すさまじい経営努力がともなって急成長し
ている企業まで「バブル」とあおり立てるマスコミの風潮に乗ってはいけな
い。急成長=バブルではないのだ。
●さて、このY社長の会社では流行商売という意味で「ブームに乗るなかれ」
と言っているわけで、会社自体は時流にのって成功したことを補足しておき
たい。
●「10」について
GE(ゼネラル・エレクトリック)のウエルチ会長は、「能力ストレッチ」
という表現を使う。これは、筋肉を伸ばすストレッチ運動のように、能力を
定期的に背伸びをさせることだ。無理難題に挑むことを時々やらないと、人
は成長が止まってしまうのだ。
新入社員は、仕事の実務を何も知らないゆえに、毎日がストレッチとなる。
しかし、管理職になるとストレッチしなくとも実務はこなせる。長期にわた
ってストレッチが行われないと、単なる頑固な中年管理職に成り下がる。い
や、この際、年令は関係ない。頑固な20代もいる。
この会社でも、定期的に高い目標を掲げたり、思い切った設備投資を行って
社内に緊張感をもたらしてきた。
<:12月10日何の日>
世界人権デー、ノーベル賞授賞式(ストックホルム)、
▲ダイナマイトの発明者、アルフレッド・ノーベル没。63歳。
遺言により毎年この日にノーベル賞が授与される(1896)
▲第1回ノーベル賞授与式。物理学賞はドイツのレントゲン(1901)
▲キュリー夫妻、ノーベル物理学賞受賞(1903)
▲湯川秀樹がノーベル物理学賞受賞(1949)
▲三億円強奪事件。東芝府中工場の従業員のボーナス約3億円を積んだ銀行
の乗用車を白バイの警官が「この車に爆弾が仕掛けられている」と車を奪
って逃走。'75年未決のまま時効に(1968)
▲ ノーベル賞授賞式
日本人は現在12人(2002年)・・・ノーベル賞授賞式12月10日は、
偉大なるスウェーデンの化学者A・ノーベル(1833 −1896)の命日。
彼の遺言により設けられたノーベル賞の授賞式が、毎年12月10日ストックホルムで行われる。
ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の計6部門で、
受賞者は各部門3人以内という制限がある。
これまでにノーベル賞を受賞した日本人
2002年 |
小柴昌俊(物理学賞) | 素粒子のひとつ「ニュートリノ」によって星の進化を探る「ニュートリノ天文学」を切り開いた方。 |
2002年 |
田中耕一(化学賞) | タンパク質分析技術の分野で、島津製作所勤務 |
2001年 |
野依良治(化学賞) | 「キラル触媒による不斉(ふせい)水素化反応の研究」、有機化合物の合成法発展に寄与。 |
2000年 | 白川英樹(化学賞) | 「伝導性高分子の発見と開発」を行い、分子エレクトロニクスの開発に先鞭を開いた。 |
1994年 | 大江健三郎(文学賞) | 作家、女優宮本信子の兄 |
1987年 | 利根川進(医学・生理学賞) | 「多様な抗体遺伝子が体内で再構成される理論」を実証し、遺伝学・免疫学に貢献した。 |
1981年 | 福井謙一(化学賞) | 「フロンティア電子軌道理論」を開拓し、化学反応過程に関する理論の発展に貢献した。 |
1974年 | 佐藤栄作(平和賞) | 日本の首相として国を代表して核兵器保有に終始反対し、太平洋地域の平和の安定に貢献した。 |
1973年 | 江崎玲於奈(物理学賞) | 半導体・超電導体トンネル効果について研究し、エサキダイオードを開発した。 |
1968年 | 川端康成(文学賞) | 人生の哀歓の幻想と美をみごとに描いた『雪国』は、近代日本抒情文学の古典といわれる。『伊豆の踊子』・『千羽鶴』・『山の音』など多くの名作を残している。 |
1965年 | 朝永振一郎(物理学賞) | 「超多時間理論」と「くりこみ理論」で有名で、量子電磁力学分野の基礎的研究につくした。 |
1949年 | 湯川秀樹(物理学賞) | 陽子と中性子との間に作用する核力を媒介するものとして、中間子の存在を予言した。 |
1954年 | 小平邦彦 | 調和積分論の業績による |
1970年 | 広中平祐 | 代数幾何学の業績による |
1990年 | 森重文 |
現在までの日本人受賞者は湯川秀樹(1949年物理)、朝永振一郎(1965年物理)、
川端康成(1968年文学)、江崎玲於奈(1973年物理)、佐藤栄作(1974年平和)、
福井謙一(1981年化学)、利根川進(1987年医学・生理学)、大江健三郎(1994年文学)、
白川英樹(2000年 化学),野依良治(2001年化学)、小柴昌俊(2002年物理学賞)、
田中耕一(2002年化学賞)の計12人。
3億円強奪事件
1968年12月10日の今日、東芝府中工場の従業員のボーナス2億9430万7500 円を移送中
の現金輸送車が、白バイ警官を装った犯人に車ごと奪われた。。
大胆かつ鮮やかな手口で、事件は未解決のまま迷宮入りし、
1975年に時効となった。容疑者は10万人をこえ、捜査費用は9億円にもなったという。